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IESEのMBAで学ぶ「EMPATHY」 ~ 「自分で誰かの靴を履いてみる」ということ~

 

Class of 2021Y.Aです。

IESEビジネススクールで学校生活を送る中で、日々よく聞く言葉があります。 “Put yourself in their shoes!” という言葉です。「自分で誰かの靴を履いてみる」という意味であり、「相手の立場に立って考える」や「相手に共感する」という意味になります。つまり「EMPATHY」という力です。ケース主体のIESEの授業では、授業の冒頭30分くらいは企業事例の分析にあてられ、残りの45分くらいは『さて、あなたが〇〇企業の社長であれば次にどういう戦略をうつか、〇〇社長の「靴の中に入って」考えなさい!』と教授が学生に向けて呼びかけ、ディスカッションを促す場面が多々あります。

EMPATHY」という力は、今後ビジネスパーソンとして、より重要視されるスキルのようです。IESEの教授陣の方々が学校のウェブサイト上において、「2021 年にビジネスリーダーが必要としているスキル 5 つ」を発表しているのですが、そのうちの1つとして「Empathy」が挙げられていました。(https://www.iese.edu/standout/management-skills-business-trends-2021/)コロナ禍という人々が苦しんでいる世の中であるからこそ、人の痛みを理解することに努め、人に「共感」できるビジネスリーダーが必要不可欠ということ。そして、イノベーションを組織にもたらすにあたっても「共感力」が必要不可欠のようです。人に共感ができるビジネスリーダーこそ、「チームメンバーの年齢、職歴、国籍、性格関係なく、チームのメンバー全員が新しいアイディアを持ち込みたいと思える雰囲気作りや接し方ができる人であるから」とのことのようです。

20199月にIESEに入学してから今日まで、IESEEMPATHYについて考えさせられることが多々ありました。その中で特に印象に残っていることが2つあります。

 

    授業で学んだEMPATHY

1つ目は、1年時のコミュニケーションの授業の出来事です。この授業では、毎回

違うテーマで3分間のスピーチの練習をします。ある時のテーマがEMOTIONであり、「自分が今までの人生で感情を揺さぶられた出来事から得られた学びをスピーチとして話す」というものでした。当初よりこのテーマで話すことは、私の中では1つしか考えられませんでした。高校時代の親友が、私が大学3年生の時に亡くなったことです。自分自身にとって非常に悲しい出来事であったため、長年人に話すことができていなかったのですが、「いつかはちゃんと話したい」と思い続けていました。そしてこの授業を機に、クラスメイト78人の前で話すことになりました。

アメリカに留学中であった時に親友が亡くなったことを知らされたこと、人生で一番悲しいショッキングな出来事であったこと、いくら後悔しても悲しんでも親友は二度と戻ってくることはないこと、彼女の分も精いっぱい生きると決めたこと、そして周りの人に常に優しく接すると決めたこと・・・スピーチの最後では、「1通のメールでも、1本の電話でもいいので、もし家族や友達に最近連絡をしていなかったら連絡をしてほしい。あなたのことを気にかけている、と伝えてほしい」とクラスメイトに呼びかけました。

たった4分間のスピーチではありましたが、私が驚いたことは、教授の方や多くのクラスメイトが涙を流しながら聞いてくれたこと、そして授業の後、個人的にたくさんのメッセージを送ってくれたことです。「話してくれてありがとう」、「Yが次お墓参りに行くときはぜひ自分のこともよろしく伝えておいてね」、「Yのスピーチの後、アメリカにいるお母さんとおばあちゃんにすぐに電話したよ」など、とても温かい言葉をもらいました。

私は人前で話すことが得意ではありません。クラスメイト78人の前で一人で立ち、話すことはとても緊張します。スピーチをしている時は、足の震えを感じていました。話したテーマも、決して話すのが簡単なテーマではありません。スピーチを終え、クラスメイトの反応を目のあたりにして思ったことは、自分自身が「良いスピーチをした」のではなく、クラスメイトが、「Yが大切にしていた親友が突然亡くなりどれだけ悲しかっただろうか、Yの靴をはいて想像してみよう」と思いながら耳を傾けてくれたからこそ、涙を流し、個人的にメッセージをたくさん送ってくれたのだということです。これこそが本当のEMPATHYなのだと考えさせられました。

スピーチを行ったほかのクラスメイトたちは、自らのうつ病の経験、親を病気で亡くした話、美味しいご飯をたくさん作ってくれたおばあちゃんが精神病で自ら死を選んで亡くなった話など、心に訴えかけられる話ばかりでした。「なぜビジネススクールという場所で、EMOTIONというテーマでスピーチをさせられるのだろう」と当初は疑問に思いましたが、「一ビジネスリーダーとして、つらい経験を勇気を出して人の前で話せるようにならなければいけない。そしてそれを受け止め、人の心の痛みがわかるような人にならなければいけない」ということを授業を通して学ぶことができた気がします。

 

もともとIESEの学生は頭がよく、職歴も申し分なく、優秀な方が多いということは知っていましたが、私のスピーチに共感をしてくれることができる、心もとても温かい人が多いということを知り、このIESEコミュニティの一員になることができ幸せだと思いました。

 

 

   チームメイトから学んだEMPATHY

2つめは、チームメイトから学んだ「EMPATHY」です。他のビジネススクールにはないIESE独自の特徴として、1年時はIESE側から決められた固定のチーム(9人)で1年間勉強することが挙げられます。すべての科目のプロジェクトや課題に対して、すべてこのチームでアウトプットを出すことが求められます。正直私はこの「固定のチーム」というIESEの特徴が当初とても不安でした。「気の合わないチームに入ってしまったら、1年間も耐えないといけない・・・自分にできるだろうか・・」と思っていました。ただ、IESEのケース尽くしのカリキュラムにしても、この1年間固定チームの制度にしても、きっとIESEなりのしっかりとした意図があるのだろうとも思いました。そして今振り返って思うことは、1年間固定のチームであるからこそ、「EMPATHY」能力を鍛えることができるということです。

チームと過ごした1年間の中で印象に残っていることがあります。3学期のある授業でプレゼンをする課題がありました。そのプレゼンの資料作成には私を含めメンバー5人が主体となって取り組んでいましたが、プレゼンを行う人は1人のみ、という指定がありました。メンバー5人のうち3人は、人前で話すことが好きかつ得意で、パーフェクトにプレゼンができるメンバーでした。プレゼンの良し悪しはチームの成績に関わることですし、「本来の自然な流れ」としては、その得意な3人の中でプレゼンをしたい人がプレゼンをすることだと思います。しかしながら、ある時チームメンバーたちが私に、「今回はYにプレゼンしてほしいのだけれど、どうかな?きっととても良いプレゼンをしてくれると思うんだよね」と言いました。私はとても驚きました。チームメンバーたちは、私が自ら「チームを代表してプレゼンしたい」とは言わないということを十分理解した上で、「チームの成績の良し悪しよりも、チームメンバーが成長できる機会を提供することの方が大事」という思いから、私にプレゼンの機会をくれたからです。当時はコロナにより私は日本に帰国しており、チームメンバーもそれぞれ別々の国にいたのですが、彼らは、週末にzoomでプレゼンの練習に付き合ってくれ、プレゼン当日も私の練習に真剣に耳を傾けてくれました。練習の成果もあり、当日はあまり緊張することはなく、自分の納得するプレゼンができました。プレゼンの後は、チームメイト全員から「AMAZING!! Yにプレゼンしてもらえて本当に良かった!」といううれしいメッセージをもらいました。

人前で話すことが好きで得意な人が、他の人にプレゼンを「譲る」ということは、とても勇気のいることだと思います。むしろ苦手な人が懸命に練習をしてプレゼンをするほうが簡単なはずです。チームメンバーの性格や考えていることを理解し、共感をし、自分自身がスポットライトを浴びることよりも、他のメンバーにライトがあたるように手を差し伸べる。そしてただプレゼンを譲るのではなく、最後までプレゼンが無事うまくいくようサポートし、見届ける。これらは、EMPATHY、そして優しさがなければできることではありません。私のチームは、1年間一緒のチームとして過ごすことを通し、家族同然のような絆を築くことができました。これは、1年を通じお互いが「お互いの靴を履いて理解する」ことに努め、EMPATHY能力を少しずつ鍛えることができたからなのではと思います。

最近、ナイジェリアで最大手の銀行の会長を務めているMs Ibkun AwosikaIESE卒業生でもあります)という女性のお話を聞くことがあったのですが、彼女が「良いチームとはどういうチームか」という質問に対して答えられたことに、はっとさせられました。 “We must shine together or lose together. In a team, we don’t need a star that is shining by itself: we must shine together and win together.” (「チームの中で一人が目立ってキラキラ輝くのではなく、全員が同じようにキラキラ輝き、全員で一緒に勝たなければいけない」)。良いチームを築くには、まさにEMPATHYという力が非常に求められているのだと考えさせられました。

 

 

私自身、ケース主体の学校での勉学、IESEで知り合うことができた70 か国の友人や教授陣の方々、バルセロナでの暮らし、コロナ禍での留学生活を通し、以前よりは何かに直面した際に「○〇さんの靴を履いて考えてみよう」と考える意識がつくようになったと感じます。今後社会で生きていく中でEMPATHYという力がより大事になるからこそ、この大切さを教えてもらい、この力を鍛えさせてもらえたIESEに留学することができ、本当に良かったと思います。

 

 

“Put yourself in their shoes!!!!” 「自分で誰かの靴を履いてみる」:私にとってはIESE卒業後も、ずっと大切にしていきたい言葉です。

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TOYONAGA KATSUYUKI